震災通信2011年7月

7月8日号
the-people

2011/07/08 11:22:00

「熱中症対策を万全に!」…これが、小名浜地区災害ボランティアセンターで毎朝行われるスタッフミーティングでの最重要ポイントになってきました。万が一のアスベストや放射能汚染対策のために、地域の側溝での土砂除きなどの作業にあたってくださるボランティアの皆さんにはゴーグル・防塵マスク・長袖・長ズボン・長靴・軍手プラスゴム手袋の着用をお願いしています。
黙って立っていても汗が噴き出してくるような暑さの中、実際にこれらを着用して作業を行ってみると、大変な重労働であることが分かります。
それを承知で、被災地のためにとおいでくださるボランティアの皆さんにはどんなに感謝してもし足りません。
そして、そのボランティアの皆さんが熱中症を起こさぬよう備えを怠らないようにしなければと、センターのスタッフ一同気を引き締めている毎日です。

被災された方たちを取り囲む状況は、「緊急」から「生活」へと大きく変わってきました。
いわき市民で避難所におられる方たちは残りほんのわずかになりました。
それぞれが仮設住宅・県営の雇用促進住宅をはじめとする借上げ住宅・民間のアパート等へと移り、各々の生活を始めておられます。
原発事故のため双葉郡の他市町村からいわきに移り住んだ方たちも、二次避難所のホテルや旅館からある特定エリアの仮設住宅に集団でその居を移し、ミニ●●町を形成しようとしています。
そういえば、近所のスーパーマーケットで目にする顔ぶれも以前とは大分違うような気がします。
道行く車の台数も増えたようで、思わぬところで渋滞が発生し遅刻するということが起きています。
気付かぬ間に隣人として生活を始められた方々を、私たちはどのように同じコミュニティの中に招き入れたらいいのでしょうか?
ある雇用促進住宅では、これまでの住民と新たに住民となられた方々の間で駐車スペースを巡って小さないざこざが発生し、その対応策として災害救援ボランティアセンターの見守り隊が双方の住民が交流できるようなサロン(週1回)を集会所において開設したという事例も起きています。
それぞれのコミュニティにそうしたトラブルの芽が潜んでおり、そうした工夫が求められています。
小名浜地区災害ボランティアセンターとしても、今後取り組んでいくべき課題は正にそこへと移行しつつあるのです。

先日、いわき市内で活動するNPO法人をつなぐネットワーク組織で話し合いが持たれ、ザ・ピープルもその一員として参加しました。
震災後のそれぞれの活動報告が主なテーマでしたが、仮設住宅が集中して建設されているいわき市中央台飯野地区内に施設を有する障がい者福祉関連の法人からある提案がありました。
施設で使わずにいる土地の一部に、仮設のパオなどを設け仮設住宅入居者の交流拠点として活用。更にこのネットワークに参加する各NPO法人の協力を得て、それぞれの特色を生かした被災者支援活動の実施拠点としても活かしていきたいというものでした。
所属するNPO法人は40ほど。
子育て支援・環境教育・災害救援・街づくり・ファイナンシャルプランナー・障がい者福祉・高齢者福祉・循環型社会形成等などその専門分野は幅広く、相互の連携が活かされれば、被災者支援の幅をグッと広げることができそうです。
そして、中央台飯野地区での活動が上手く運べば、小名浜地区へも水平展開していけるのではないかと夢が膨らみます。

ただ、一方では被災者支援と称して仮設住宅や雇用促進住宅をバラバラに訪問する様々なグループの存在が新たな問題を生んでいます。
度重なる訪問に嫌気が差して、居留守を使ったり、引きこもりになったりという方も現れているというのです。
被災者支援のあり方を早い時期に整理し、統制を加えるべきところは加えるといった措置が求められています。
「生活」もまた、待ったなし!なのですから。
吉田恵美子
特定非営利活動法人 ザ・ピープル 理事長

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7月21日号
the-people

2011/07/21 10:26:00

なでしこジャパンがワールドカップ優勝を決めた、記念すべき7月18日。
この日は、私たち「いわき市小名浜地区災害ボランティアセンター」に関わる者にとっても記念すべき日となりました。
センターは3月11日の大震災を受け、一月以上過ぎた4月19日にNPO法人ザ・ピープルを中心として開設されました。
そして、全国各地からおいでくださるボランティアの方々の力を借りて、小名浜地区内の被災者から寄せられる様々な要望に応える活動を続けてきました。
しかし、施設の引越しと被災者の見守り事業へと活動をシフトする準備に入るため、一般的な作業にあたるボランティアの皆さんの受入れをこの日で一旦終えることにしたのです。
今後は、いわき市社会福祉協議会内の「いわき市災害救援ボランティアセンター」を通してボランティアさんの受け入れを行い、地域内の被災者のニーズに応えることになります。
その朝、台風6号が九州地方に大雨をもたらし始めたというニュースを目にし、津波泥の溜まった側溝を今日中にきれいにしなければ…との思いを募らせながらスタッフはボランティアさんたちを出迎えました。
センターに足を運んでくださったボランティアさんたちは66名。
七、八割は男性の方々で、半数は毎度おなじみのリピーターの皆さんです。
万が一の危険を回避する為、長袖長ズボン、長靴、防塵マスク、ゴーグル、軍手とゴム手袋といった装備も万全です。
地域を挙げて側溝の土砂除きを行う手順を進めてきながら最後まで残ってしまった下神白(しもかじろ)地区と小名浜吹松の個人宅といった作業現場へ、「今日で最後だねエ」と口々に話しながら出て行かれました。
一方、センターではボランティアさんのための炊き出しを準備して帰りを待ちました。
チラシ寿司にオードブル、漬物、スイカ…。スペシャルで差し入れのビールも並びました。
これまで何度も足を運んで小名浜地区のために汗を流してくださったボランティアさんたちへの心ばかりのお礼の料理です。
作業終了の16:00頃までには、ボランティアさんたちがそれぞれのグループごとに戻って来られました。
スイカ片手に「●●さんがこんなことまでしてくださってと、涙をこぼさんばかりにして喜んでおられましたよ」と、報告してくださるボランティアさんの笑顔が、このセンターを通して地域の被災者と全国各地からのボランティアの方々が新たなつながりを生み出していることを物語ってくれていました。

全国各地から小名浜地区においでくださったボランティアの皆さんはこれまでに3300名を越え、600件近くの被災者からの要望に応えてくださいました。
地区内の被災地を車で走ると、被災直後を知っている者には驚くほどにきれいになっており、当時の惨状を思い出し難いほどです。
センターの一角に設えられた七夕飾りには、これまでセンターで活動してくださったボランティアの方々が書いた短冊が下がっています。
「東北は負けない!」「復興した姿を見にまた来ます」「いわきが大好きになりました」…。
一つ一つのメッセージに、多くの人と繋がる強さを感じずにはいられません。
本当に、これまでありがとうございました。

翌7月19日には、社会福祉協議会小名浜地区センター・小名浜地区包括支援センターの皆様と共に、被災された方々の今後の生活再建を見守る為のサロン開設にあたっての話し合いがもたれました。
ステップを一つ上がったものの、ゴールはまだまだ遠く彼方のようです。
吉田恵美子
特定非営利活動法人 ザ・ピープル 理事長