【2016年5月31日号】いわき震災通信vol.89

皆様、

例年よりも早い夏の到来を思わせる陽気が続いています。

熊本地震の被災地では、熱中症の被害も懸念されています。

被災されている方々やボランティアで活動される方々にとって、少しでも過ごしやすい気候であるように祈らずにはいられません。

5月14日から4日間、熊本に伺って来ました。

東日本大震災当時、私たちの活動を支援し続けてくれた「NPO法人れんげ国際ボランティア会」が今回の地震で被災者支援のために動いているとの報を受けて、少しでも応援できることがあればと駆けつけたのでした。

カバンの中には、発災後いわきの中高生たちが街頭募金で集めた義援金や、ピープルの店舗に置かれた募金箱で集められた募金、そして関連団体などから託された募金が入っていました。

その総額は100万円を超えていました。

ちょうど地震発生から1ヶ月が経とうとしていました。

熊本市中央区のビルが立ち並ぶメインストリートを走るだけでは、どれほど大きな地震があったのか想像することは難しい程、日常が戻っていました。

が、熊本市内の東区から益城町に入るとその様相は一転し、あらゆる家屋に生々しい傷跡が残っていました。

昔ながらの大きく立派な日本家屋は、どれも上から大きな力で押しつぶされたようになっていました。

元来狭い作りだという脇道は、崩れた塀や法面の土砂が取り除かれることなく残され、車の通行ができない場所も少なくありませんでした。

復旧のための手が足りていないのだと、感じずにはいられませんでした。

「余震が怖くて家で眠れない」…そう言って、いまだテントや車両での生活を選ぶ被災者がいるという現実が、胸にのしかかってくるようでした。

そうした状況の中で、「れんげ国際ボランティア会」が行っているのは、熊本市東区内の避難所に向けた配食の形での炊き出しでした。

統廃合が進む避難所の中では、東日本大震災当時とは違った状況が生まれていました。

日中は熊本市内の職場に働きに行き、夜は避難所に戻って過ごす人が多く、東日本大震災当時いわきで仕掛けたような形での自炊の炊き出しは難しいということでした。

確かに、訪れた避難所に日中残っているのは高齢者ばかりという印象でした。

缶詰とレトルト食品ばかりが続く避難者の方たちの夕食に、野菜がたくさん入った汁物を届けているのでした。

気温が上がっていくこの時期ですから、運搬のためには最新の注意を払っている様子が感じ取れました。

私がお邪魔させていただいた時には、汁物を届けたついでに、避難されている方々にいわきから持参したコットンベイブをプレゼントさせていただきました。

このベイブは、サルの顔をしています。

そして、「熊本の皆さん、一日も早く禍がサル(去る)ように!」とのメッセージをつけてあります。

「福島で避難生活をしているお母さんたちが作った人形です。元気になって頂きたくて持参しました。」そう言って手渡すと、こちらが恐縮するほど何度もお礼を言って下さいました。

同じ境遇をくぐり抜けて来ているもの同士だからこそ、分かり合えるものがある、感じ取れるものがあると思う瞬間でした。

 

5月10日、東京青山にある国連大学1Fの地球環境パートナーシッププラザセミナー室で、「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」の報告会が催されました。

都内で自分たち自身が主催する形で催すのは初めての経験ということで、まさに右も左も分からぬまま準備を進め、漸くその日を迎えた報告会でした。

この準備に手を貸してくださったのは、天ぷら油から作られたBDFで走るバスでコットンプロジェクトを応援するツアーを運行しているNPO法人エコツーリズムネットワーク:リボーンの皆さんでした。

プロジェクトにこれまで足を運んでくださった方々は、15,000人を超えました。

その多くは首都圏からの方々。

その皆さんに、自分たちのプロジェクトについてきちんとお伝えしきれていなかったのではないという思いが、プロジェクト丸4年を過ぎた今になって湧き出て来ました。

コットン畑での作業前の10分程度では、プロジェクトの概要をざっとお話するのが精一杯です。

ザ・ピープルという非営利組織と、いわきおてんとSUN企業組合という営利組織が一緒に推進しているプロジェクトには、常に分かり難さがついて回ると言われてきました。

「それならば、二つの組織からそれぞれの担う役割をきちんと伝えられるような場を持とう」と、企画されたのが、この報告会でした。

この報告会のお誘いに、170名の方から参加希望のお返事をいただきました。

これまで企業単位でツアーを組んでくださった方、募集型のボラバスツアーに参加くださった方、市民団体としていわきを訪れてくださった方、これまでは全く接点がなかったけれど報告会があると聞きつけて申し込んでくださった方…。所属もバラバラな皆さんが、プロジェクトの昨日、今日、明日を知りたいと会場に足を運んでくださいました。

いわきから会場に駆けつけたのは、15名。

ピープルコットンチームと名付けたコットン栽培を専門的に携わっているメンバー、栽培農家、そして収穫されたコットンを原料にものづくりを進める「いわきおてんとSUN企業組合」からもスタッフが顔を揃えました。

ふくしま浜通りの現状について、コットン栽培の広がりについて、商品化の歩みについて、連携する動きについて、来訪者に対して実施したアンケート結果の報告について…担当がそれぞれ現場での声を伝えました。

その中で、ものづくりの担当をしている企業組合のスタッフが語りました。

「吉田がいなくなってストップするプロジェクトでは意味がありません。僕がいなくなってストップするプロジェクトとでもやはり意味がありません。世代を超えて継続していくため、次世代につないでいくことが求められているのです。」

30代の彼が語る決意に胸が熱くなりました。

私たちが育てていたのは、コットンだけではありませんでした。

地域を背負おうと言ってくれる「人」だったのです。

私たちは、プロジェクトの10年後の未来に向けた目標を掲げました。

 

1)いわき固定種のコットンを育てる土壌を作り上げる

2)都市農村交流の有機農業モデルを創り上げる

3)コットンを仲立ちとする農業者のネットワークが消費者にダイレクトに販売できるルートを生み出す

4)地域課題を解決する手法として農業があることを実証する

5)新たな価値を創り続ける担い手を育てる

6)ふくしま潮目をブランドとして自立させる

7)オーガニックであることが魅力であり武器であるマーケットを創り上げる

 

この目標に向かって、前に進んでいくことをお約束したいと思います。

そして、当日会場においでくださった皆様に心からの感謝を申し上げたいと思います。

いつもながら、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

吉田恵美子

特定非営利活動法人 ザ・ピープル 理事長

事務局 〒971-8101 福島県いわき市小名浜蛭川南5番地の6

TEL 0246-52-2511 FAX 0246-38-9538 携帯 090-2881-3107

URL:http://npo-thepeople.com/

 

いわき市小名浜地区復興支援ボランティアセンター センター長

事務所 〒971-8164 福島県いわき市小名浜君ヶ塚町13-6

TEL/ FAX 0246-92-4298

http://onahama-volunteer.jimdo.com/

 

いわき おてんとSUN 企業組合 代表理事

事務所 〒970-1152 福島県いわき市好間町中好間字川原子作17-1

TEL 0246-80-0662 FAX 0246-85-5978

http://www.iwaki-otentosun.jp/