【2016年3月22日号】いわき震災通信vol.87

皆様、

東京から桜の便りが届いた昨日、我が家の庭には沈丁花の甘い香りが漂い、こぶしの純白の花びらが青空に映えていました。

そして、春の農作業も始まりました。

花粉症の皆さんにはちょっと気の毒ですが、私にとっては心躍る春の到来です。

 

5年目の3月11日をめがけて、マスコミでは競って東日本大震災関連の報道を繰り返していました。

次々立ち現れる様々な事件、事故、ゴシップに追い回されていた常日頃の報道のあり方への贖罪であるかのように、その報道では被災地と呼ばれる地域の様々な課題が取り上げられ、解説されていました。

その報道を、被災地に住む人たちはどんな気持ちで見聞きしていたのでしょうか?

ある人は言いました。

「この季節になると、息苦しさが募ります。新聞を開いても、テレビをつけても、この季節は『震災を忘れない』とのメッセージと共に、あの当時を思い出させる映像や記事が目に飛び込んできます。忘れないでいてくれることをありがたく思う反面、息苦しさを感じるのは私だけなのでしょうか?あの頃の、逃げ場のない閉塞感が立ち返ってくるのは、私だけなのでしょうか?」

日頃は、震災のことなどとうに忘れてしまったようなマスコミのあり方に腹を立てていたのに、これほど集中して報じられると受け入れ難いものを感じてしまう…。

そんなジレンマは、同じように私の中にもあるものでした。

5年目というタイミングがさせていたに過ぎないこの震災報道ラッシュは、すでに下火になろうとしています。

次は、桜に興じる日本列島が大きく報じられる番なのでしょう。

 

「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」では、ようやく今年度収穫したコットンの計量と綿繰りが終わりました。

昨年度に引き続き約630kgのシードコットン、原綿計算で210kgの収穫ということになりました。

2012年に栽培を始めてから、2013年に890kgという最多の収穫量を記録したあとは、ほぼ横ばいの収穫が続いていることになります。

昨年秋の気温のなかなか下がらない天候や長雨のせいか、コットンボールがなかなか弾けず、やきもきしていた農家さんたちが少なくなかったので、やっと皆で胸をなでおろすことができました。

2月20日、全国コットンサミットの実行委員会から講師を招いて、コットン栽培についての学習会(地球環境基金助成事業)を開催した際に、集まってきてくれた農家さんたちの関心事は、ほかならぬ収量のことであり、4年目の栽培ということで連作障害があるのかどうかということでした。

その質問が講師に投げかけられました。

その時の答えは、「連作障害はあります」でした。

それは、私たちには少々受け入れ難いものでした。

実は、コットン栽培や有機農業に関して専門的な知識をお持ちの方に尋ねると、連作障害が「あります」と「ありません」の双方の返事が返ってきます。

4年目の栽培となる圃場でも、これまでと同じような収量が確保できたことは、「ありません」という判断に従ってきた私たちにとって、これでよかったという裏付けのように感じられました。

ただ、その判断がずっと正解であり続けるのか、心配は尽きません。

更に、年々の気象条件の変化が加われば、何を正解として進めるべきか、迷うことも少なくありません。

農業とは、難しいものです。

このプロジェクトを始めた当初、私たちの目の前にいて支援を必要としている人たちは、生業を奪われかねない状況にあった農家さんたちでした。

原発事故の影響で食用の作物を作っても買ってもらえないという理由で耕作放棄地が増えるのを、市民の力で何とか食い止めたいとスタートしたプロジェクトでした。

4年の栽培の中で、このプロジェクトには様々な意味合いが加わってきました。

福島から新たな繊維産業を生み出したい。

首都圏をはじめとする外部の方たちに来てもらって栽培の仲間に加わってもらうことで、福島県浜通りの農業の現状を知って応援してくれる仲間に加わってもらえるような機会としたい。

いわきに育つ子供たちに、コットン栽培を通して、震災教育、環境教育、産業教育の場を提供したい。

双葉郡からいわき市内へと避難してきている方たちと一緒に農作業する中から、新たなコミュニティを生み出したい。

そして、なかなか就労に踏み踏み切れない若者に、コットン畑で働く機会を通して、社会へと踏み出すきっかけを作り出したい。

二兎を追うどころか、三兎も、四兎も一度に追おうとしているプロジェクトになってきました。

最後の兎について、嬉しい出来事がありました。

「いわき若者サポートステーション」から、ザ・ピープルにはジョブトレーニングの形で若者たちが週3回働きに来ています。

コットン畑での農作業を通して、就労に向けた準備を整えようというものです。

昨年働きに来ていた若者2人が、年末・年明けに「就活をします」と言って相次いで巣立っていきました。

そして、その1人が先日全くのボランティアとしてコットン畑の農作業の手伝いにやってきました。

「就職が決まったので、報告にきました!」と顔をほころばせました。

就職先を尋ねると、原発避難者の方たちの支援関係の事務職に就けたとのことでした。

「履歴書に、みんなの畑で避難してきた方たちと仲良くさせていただく中で、大変な思いをしておられるのが分かったので、是非役に立ちたいという思いを書いたんです。もし、ピープルで働いていなかったら、そんな気付きはなかったでしょうし、就職できなかったと思います」と、嬉しいことを言ってくれました。

支援を受ける側から、支援する側に立場が変わることが、私たちの手で生み出し得る何よりも素晴らしい成果だと、私たちは思っています。

大きな成果をありがとう!叫びだしたいほどの気持ちでした。

 

最後に、都内で現在開催されている販売会のお知らせをひとつ。

「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」と、今年度の「新しい東北先導モデル事業」の広野わいわいプロジェクトの中から生まれた新商品が、永田町にあるさとゆめLABSHOP (http://satoyume.com/labshop/)で、震災から5年のメモリアル販売会として3月31日まで販売されています。

メモリアル柄のTシャツや手紡ぎセット、メモリアルパッケージのコットンベイブ、広野町のオリーブキャンドルなどが並んでいます。

もしお近くに行かれる際には、覗いていただけたら嬉しいです。

 

今回も長文で失礼いたしました。

 

吉田恵美子

特定非営利活動法人 ザ・ピープル 理事長

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いわき市小名浜地区復興支援ボランティアセンター

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いわき おてんとSUN 企業組合 代表理事

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